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SACRAブログ

妊娠10ヶ月に入ったらよく動くこと:安産の極意?

2006.05.15役に立つ?情報

b772999c.jpg前回帝王切開や骨盤位など、帝王切開での分娩が予定されている方を除き、妊娠10ヶ月に入ったら、お腹が張ってかまいませんからどんどん動いてください。特に初産婦さんは、長めの散歩やきつめの家事を積極的におこなって、よくお腹が張るようにがんばってください。
これは感覚的にもご理解いただけると思いますが、来るべき分娩の準備状態を整え、陣痛を引き起こす呼び水となるためです。

陣痛・分娩のメカニズムについては比較的よく研究されており、陣痛の発来と子宮頚管(子宮の出口)の熟化と開大が密接に関連して進行することが知られています。またその反応は、ばい菌に対する炎症反応に酷似していて、白血球の浸潤が陣痛の発来と子宮口の開大に大きな役割を果たすことも知られています。私も留学中にこの分野の研究に携わり、分娩準備状態の進行(子宮頚管の熟化)とともに子宮頚管にマクロファージという白血球が増加してくること(Macrophages and not granulocytes are involved in cervical ripening. Sakamoto Y et al. J Reprod Immunol. 2005 Aug;66(2):161-73)、そして陣痛発来後には顆粒球という白血球が劇的に浸潤してくるが、そのメカニズムにはインターロイキン-8という物質を介した一種の連鎖反応が考えられること(Interleukin-8 is involved in cervical dilatation but not in prelabour cervical ripening. Sakamoto Y et al. Clin Exp Immunol. 2004 Oct;138(1):151-7.)を報告しました。しかしこれらの成績からは、陣痛発来の引き金そのものは明らかになりませんでした。

それが最近の研究で、子宮頚管に存在するある種の細胞に物理的な引き伸ばし(進展)刺激が加わると、種々の生理活性物質を産生することが報告されました。それらの中には子宮頚管を熟化させる酵素群や、白血球を呼び込む作用を持つインターロイキンー8も含まれます。妊娠10ヶ月に入ったら赤ちゃんの頭は骨盤内に入ってきますので、よく動いてお腹を張らせることは子宮頚管の熟化を進め、陣痛発来の呼び水となりうることを理論的に裏付ける成績と考えられます。

SACRAでは予定日を超過してもすぐに陣痛促進剤は使用せず、胎児の状況を確認しながら出来るだけ自然の陣痛を待ちます。もし予定日をかなり超過して41週を超えていくことになると、陣痛促進剤の慎重な使用も選択枝となりますが、子宮頚管が柔らかくなって開いておれば、比較的安全に使用することが出来ます。

写真のワンちゃんたちのように、というわけではありませんが、10ヶ月に入ったらよく動いてお腹を張らせることが、安産の極意?だと思ってがんばってください。
もちろんあまり激しい運動はお勧めしません。転んだりしないように注意しながら、散歩や家事中心の運動で結構です。

話はすこし飛びますが、以前どこかの学会で聞いた話です。
卵子は成熟すると卵胞から飛び出して卵管に捕えられるのですが、この排卵現象にも白血球の浸潤が関与していることが知られています。排卵現象と分娩には他にも共通点があり、どちらも時間経過とともに(卵子は2週、胎児は40週)徐々に成熟して、最後は液体(卵子は卵胞液、胎児は羊水)から白血球の力を借りて外に出てきます。

神様が作られた仕組みは、複数の生理現象に共通のシステムが利用されていたりして、非常に巧妙に出来ていることに驚きます。

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